試合開始30分前の9時に集まったメンバーはGK落合、DF千北、久松、西牟田、MF山下、下村、佐藤、FW小倉の8人だった。3連敗中のＦＣアルマダのメンバーは最悪のシナリオを容易に想像できた。また、試合開始前にゴールのネット張りを強要されたこともあり、切ないものがあった。かくして代理キャプテン山下の円陣とともに試合が開始された。
FCアルマダはまず、数的有利なFCプロトンのコンビーネーションプレーを抑えた。各選手はそれぞれのポジションの隙間を狭めてコンパクトにまとまり、相手の動きに素早く反応し、インターセプトするポジショニングを展開。FCプロトンに自由なプレーをさせなかった。千北、西牟田、久松のトリオは中央をガード、ボランチの山下は冷静にインターセプトし、中盤の下村、佐藤もボールを上手にさばいて、前線の小倉に球を繋げた。
試合開始早々、FCプロトンの大きなサイドチェンジから危険な得点チャンスがあったが、枠をそれた。その２分後には小倉が放ったシュートもゴール上に外れ、草むらに消えた。
FCアルマダのＧＫ落合は、FCプロトンの攻撃を落ち着いて見極め、またフィールド陣は前線からプレスをかけて来ないFCプロトンにある「疑問」を抱きながらも冷静にボールをキープした。
そして前半15分、前線への大きなロビングに競り勝ったFW小倉が、先制点を奪う。3連敗中は何度も同じ愚痴をこぼし、試合前日、熊本までベルギー代表のキャンプを見に行くも15分しか練習を公開されずに涙を飲んだ男の執念の一発だった。
ある「疑問」が「確信」へと変わったFCアルマダは緊張を切らすことなく後半へ。
FCアルマダはその後、スペースが空いても何とか持ちこたえ、オフサイドトラップでFCプロトンの攻撃に対応。後半8分、小倉がFCプロトンDFのマークをかわし、西牟田からのセンタリングにドンピシャの豪快なヘディングシュートで2-0とした。
セーフティーリードとなったFCアルマダは下村、佐藤、久松、西牟田が得点に飢えた狼と化し、緊張の糸が切れたFCプロトンゴールに迫った。
15分、佐藤の強引なシュートが小倉の足元へ。ハットトリックとなるゴールを右隅に鋭く突き刺し3-0とした。FCアルマダは巧みなパスまわしで、優位に試合を進め今季初勝利を飾った。
FCアルマダ勝利の意味。
FCアルマダの闘将千北は、こう語っていた。
「今日の試合は勝たない方がいいと思う。8人で勝つようなことになったら、『11人でやるより8人のほうが機能する』ということになってしまう。ある意味うちらしいけどね。」
彼は、まさか3連敗中のFCアルマダが8人で勝利するという奇跡を信じていなかった。だからこそ、半分冗談でこんなことを話していたのだ。それが本当のことになってしまった。
サッカーは、常に計算が可能な精密科学のようなわけにはいかず、やってみなければわからないからこそ美しく、また人を魅了するスポーツなのだ。今回の対FCプロトン戦の勝利は不可能を可能としたものだ。
この勝利で、FCアルマダは少なくとも怖じ気づいて社会人リーグに臨むのではなく、自分達の可能性を確信して挑むことになるだろう。FCアルマダは前節までは見られなかった、ここ数カ月でベストといえる試合を展開できた。数的不利な状況で戦ったからこそ、強いものが引き出せたのだろう。しかし、ある「確信」を抱いたチームに勝つことで、満足してはならない。
大切なことを３つ挙げる。
まず、FCアルマダは、ただ食われるために社会人リーグに出場するのではないということ。対FCプロトン戦では、チームの真の実力を引き出すことができた。２つ目は、キャプテン原が抜けた後のディフェンスの基盤となるものを、やっと見出せたということ。そして、試合後のブラックモンブランがいつも以上においしかったという事である。
これらの問題点・課題を解決できたことが、試合を放棄せずに戦った成果といえるだろう。
[試合結果] FCアルマダ 3−0 FCプロトン
福岡地区社会人リーグ第5節は6月2日にFC BURNSとの対戦となっている。
（8：30集合、9：30kick off） |
ガゼッタ久松紙 5月26日 
